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個人M&A拡大、バトンズ上場が示す300万円起業のリアルな条件

バトンズが2026年4月に東証グロース上場した背景には、127万社の後継者不在と個人M&A拡大がある。会社員のまま300万円で動く条件を整理する。

この記事でわかること

  • 本文に入る前に、まず押さえるべき結論
  • 読後の行動判断が、ここからどう変わるか
  • 次に読むべき関連記事の入口
個人M&A拡大、バトンズ上場が示す300万円起業のリアルな条件
目次

会社を買うって聞くと、どこか別世界の話に聞こえるよね。あたしも最初はそう思ってた。でも今年、その空気がはっきり変わった。

M&Aマッチングサイトの「バトンズ」が2026年4月21日、東京証券取引所グロース市場に上場した。証券コード554A、公募価格660円。上場初日は買い注文が殺到して値がつかず、翌4月22日にようやく初値1,674円が形成された。公募価格の約2.5倍だ。個人が会社を売り買いする市場が、株式市場から「本物」だと認定された瞬間だ。

上場記者会見で、代表取締役CEOの神瀬悠一氏はこう語ったと報じられている。「上場はゴールではなく、社会インフラとしてのスタートライン」。この一言に、今日書きたいことの全部が詰まっている。個人M&A(個人が自己資金や融資で会社・事業を買収すること)は、もう一部の変わり者の趣味じゃない。会社員のまま動ける、現実的な選択肢の一つになった。

バトンズ上場が教えてくれた、個人M&Aがもう特殊な話じゃなくなった理由

バトンズの上場は、単なる1社の資金調達イベントじゃない。数字がその中身を裏付けている。上場に伴う関連資料によると、2026年2月末時点で累計成約は3,315組、交渉可能な案件数は10,673件、買い手として登録した人の累計は30.3万人にのぼる。

30.3万人という数字を自分ごととして捉え直してみてほしい。これは「いつか会社を買ってみたい」で終わった人の数じゃない。実際にプラットフォームへ登録し、案件を見にいった人の数だ。案件を眺めるだけの段階から一歩踏み出した人が、すでに30万人を超えている。

証券市場が個人M&Aのプラットフォームに資金を出すという判断は、投資家が「この市場はまだ伸びる」と見ていることの表れでもある。あたし自身、SNSマーケの世界でトレンドが「一部の先行者の遊び」から「みんなが乗る前提」に変わる瞬間を何度も見てきた。バトンズの上場は、個人M&Aにとってのその転換点だ。

ここで誤解してほしくないことが一つある。上場したからといって、会社を買うことが簡単になったわけじゃない。デューデリジェンス(買収前の財務・法務調査)も、契約交渉も、買った後の経営も、難易度は少しも下がっていない。変わったのは、選択肢としての認知度と、案件へのアクセスのしやすさだ。この違いは、この後の章でもう一度触れる。

あたしはSNSマーケの世界で独立した人間だから、この手の「認知の壁が崩れる瞬間」には敏感になる。数年前まで、SNSで稼ぐという話も「一部の目立ちたがり屋の副業」扱いだった。それが今や企業案件が当たり前になり、上場企業までSNS運用を外部委託する時代になった。個人M&Aも同じ道をたどっている。プラットフォームの上場は、その道の途中経過を示す里程標にすぎない。

127万社が買われるのを待っている、後継者不足という需要側の事実

なぜ今、個人M&Aの市場がここまで拡大できたのか。答えは供給側にある。中小企業庁が2019年11月に公表した資料「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」がある。それによると、引退の目安とされる70歳を超える経営者は、2025年までに約245万人にのぼる。そのうち約半数、127万人が後継者未定だという。

この状態を放置すると何が起きるか。同資料は、2025年までの累計で約650万人分の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があると試算している。数字が大きすぎてピンとこないかもしれないけど、中身は単純だ。「継ぐ人がいないまま、黒字でも畳まれる会社」が大量に出てくるという話だ。

黒字廃業という言葉を聞いたことがある人もいるはずだ。技術も顧客も持っているのに、社長の年齢だけを理由に会社をたたむ。これは経営が下手だったからじゃない。単純に、次にバトンを受け取る人がいなかっただけだ。この「継ぎ手不在」という需要が、個人M&Aという新しい供給ルートと出会った。バトンズの30.3万人という買い手登録数は、その出会いの規模を表している。

後継者不在と買い手の出会い

供給側の127万社と、需要側の30.3万人。この両方の数字が同時に存在していることが、今の個人M&A市場を特別なものにしている。片方だけでは市場は動かない。会社を継ぎたい経営者と、会社を買いたい会社員が、同じプラットフォーム上で出会える仕組みが整ったからこそ、市場として機能し始めた。

300万円で会社を買うという発想、三戸政和が7年前に蒔いた種が育った

「300万円で会社を買う」という発想自体は、実は新しいものじゃない。2018年、三戸政和氏が「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という本を出した。事業承継通信のインタビューによると、このシリーズは累計20万部を超えるベストセラーになった。

当時の反応は今とはまるで違った。同インタビューでは、当初M&A業界の人たちから批判を受けたと三戸氏自身が振り返っている。会社を買うという行為が、まだ「一部の資産家や事業家がやること」という前提で見られていた時代だったからだ。

それでも三戸氏はサロンを開き、7年かけて実践者を増やしていった。同インタビューによれば、サロンメンバーのうち約100人が実際に会社を買うところまで進んだという。本を読んで納得した人と、実際に契約書にサインした人の間には、大きな壁がある。その壁を越えた人が100人出たという事実こそ、この発想が机上の空論ではなかったことの証明だ。

300万円M&A発想の成熟

7年前に「異端」だった発想が、2026年にバトンズの上場という形で株式市場から評価される。この変化の速さを、あたしは素直にすごいと思う。同時に、種をまいてから実を結ぶまで7年かかったという事実も忘れちゃいけない。個人M&Aは、思いついた翌日に結果が出るタイプの話じゃない。だからこそ、動き出すタイミングは早いほうがいい。

会社員のまま動くなら、300万〜500万円が意味する現実

ここまで読んで、じゃあ会社員のあたしが動くとしたら、実際にいくら用意すればいいの、と思っているはずだ。答えははっきりしている。個人M&Aの取引額は、300万〜500万円がボリュームゾーンだと複数のM&A仲介会社が解説している。だから今日、まず貯金通帳を見て300万円という数字が現実的かどうかを確認してほしい。

この価格帯にはちゃんと理由がある。取引される案件は、後継者がいないまま黒字で運営されている個人商店や小規模な製造業、サービス業が中心だ。会社の規模自体が小さいから、譲渡価格も数百万円という水準に収まる。1億円を超えるような大型M&Aとは、そもそも参加者も難易度も違う世界だと考えたほうがいい。

個人M&Aに必要な総費用内訳

300万〜500万円という金額は、退職金の一部や、これまでの貯蓄でも手が届く範囲だ。実際、三戸氏のサロンで会社を買った約100人も、会社員という立場を維持したまま資金を用意して動いた人が多いと報じられている。会社を辞めて退路を断ってから買うのではなく、会社員としての給与という安全網を持ったまま検証できるのが、この価格帯の一番の利点だ。会社を辞めない副業起業の設計でも書いたけど、収入源を複数持つという発想と、個人M&Aは相性がいい。

もちろん300万〜500万円という金額は、案件の譲渡価格であって、それだけで全てが終わるわけじゃない。目安として、デューデリジェンスを税理士や中小企業診断士に依頼する費用が30万〜100万円程度。契約書レビューなど法務手続きの専門家報酬が数十万円、買収後すぐに必要な運転資金が3〜6か月分だ。ここまで合わせると、譲渡価格300万〜500万円に対して、総額で500万〜700万円程度を見込んでおくのが現実的だ。ここを甘く見ると、買った後に資金繰りで詰まる。

ここまで読むと、じゃあ結局あたしは何を満たせば動けるのか、と思うはずだ。「会社員のまま買う条件」を、ここで5つに整理しておく。

1つ目、就業規則で他社の経営への関与が禁止されていないこと。禁止されていても、会社に相談すれば許可が下りるケースもある。まず確認しないことには始まらない。

2つ目、譲渡価格300万〜500万円に加えて、専門家費用と運転資金を合わせて最低でも500万〜700万円程度を用意できること。価格帯だけを見て「300万円あればいい」と思い込むと、契約後に資金が足りなくなる。

3つ目、デューデリジェンスに数週間から数か月かけられるスケジュールがあること。本業と並行して進める以上、平日の夜や週末に時間を確保できるかが現実的な制約になる。

4つ目、買収後に前経営者からの引き継ぎ期間を最低1〜3か月確保できること。引き継ぎを急いで縮めると、従業員や取引先との関係構築が雑になる。

5つ目、簿外債務の調査を専門家に依頼する費用を惜しまないこと。ここをケチると、300万〜500万円で買った会社が、後から数百万円の負債を抱えた会社に変わりかねない。

この5つのうち、1つでも「今の自分には無理」というものがあれば、いったん立ち止まっていい。全部そろってから動く必要はないけど、どこが自分のボトルネックかを知っておくことが、300万〜500万円という数字を現実にする最初の一歩だ。次の章で、この5条件を満たすための最初の3ステップを具体的に渡す。

会社を辞めずに動くと決めたら、最初にやるべき3つのこと

理屈はわかった、で結局今日から何をすればいいのという人のために、会社員のまま進められる3ステップを渡す。どれも会社を辞める必要はない。

1つ目は、今週中に自分の会社の就業規則を確認することだ。厚生労働省が公表する「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、労働者からの届出に基づき会社が許可・制限を判断する「届出制」が原則として示されている。ただし実際の運用は企業ごとに差があり、届出制ではなく事前の許可制を採用している会社も今なお多い。確認すべきは3点だ。就業規則に副業・兼業を禁止する条文があるかどうか、許可制か届出制か、そして会社役員への就任や事業経営への関与まで想定した条文になっているかどうか。個人M&Aで会社のオーナーになる場合、単なる副業より「他社の経営に関与する」という扱いになりやすい。就業規則の該当条文を人事担当に確認しておくと、後のトラブルを避けられる。ここは一般的なルールの話であって、あたし自身が個人M&Aを実行して確かめたわけじゃない。だからこそ、実際に動く前に自分の会社の担当者へ直接確認することを勧めたい。

2つ目は、今月中にマッチングサイトへ登録することだ。バトンズやトランビといったプラットフォームに登録すれば、実際にどんな価格帯でどんな案件が出ているかを、無料で眺められる。買う気が固まっていなくても、まず案件を見る段階から始めていい。あたしのクライアントにも、最初は情報収集だけのつもりで登録した人がいる。

3つ目は、3か月以内に資金計画を1本立てることだ。300万〜500万円の譲渡価格に加えて、デューデリジェンス費用や運転資金をどこまで自己資金で賄い、どこから融資を検討するかを整理する。日本政策金融公庫には「事業承継・集約・活性化支援資金」という制度がある。国民生活事業向けの枠では運転資金として最大4,800万円まで、設備資金と合わせると最大7,200万円まで融資対象になる。300万〜500万円規模の個人M&Aなら、自己資金と組み合わせれば十分カバーできる範囲だ。ただし対象要件として、中期的な事業承継計画を現経営者側と共に策定していることなどが求められるため、案件が固まった段階で早めに窓口へ相談するのが現実的だ。3か月という期限を切ることで、いつまでも情報収集だけで止まる状態を防げる。

会社員がM&Aを検討する未来

この3ステップの共通点は、どれも会社を辞めるという大きな決断を必要としないことだ。就業規則を確認する、サイトに登録する、資金計画を立てる。1つずつは地味だけど、この3つが揃って初めて、127万社という供給と、あなた自身という需要が出会える準備が整う。

個人M&Aは魔法じゃない、正直に書いておきたいリスクと向き合い方

ここまで前向きな話ばかりしてきたけど、最後に正直な話をしておきたい。個人M&Aは、300万円払えば自動的にうまくいく魔法の切符じゃない。

一番怖いのは、簿外債務(帳簿に載っていない借金や保証債務)の見落としだ。デューデリジェンスを甘く済ませると、買った後に想定外の負債が出てくることがある。専門家に払う費用を惜しんで自己流で調査を済ませようとする人ほど、このリスクを踏みやすい。

だからこそ、契約書にサインする前に税理士や中小企業診断士など第三者のレビューを必ず挟んでほしい。数十万円のレビュー費用を惜しんだ結果、数百万円の想定外負債を抱え込む方が、よほど高くつく。300万〜500万円という価格帯には、この専門家費用も含めて予算を組む発想が要る。

もう一つは、買った後の経営そのものの難しさだ。会社を買うところまでは資金と手続きの問題だけど、買った後に経営を続けるのはまったく別のスキルが要る。この工程はPMI(Post-Merger Integration、買収後の経営統合プロセス)と呼ばれていて、実は譲渡価格の交渉より難易度が高いとされる。前の経営者から引き継いだ従業員との関係づくり、既存顧客との信頼維持、これはお金では買えない。

具体的には、最初の90日が勝負になる。買収直後にいきなり自分のやり方へ変えるのではなく、前経営者に一定期間伴走してもらいながら、従業員一人ひとりと個別に話す時間を作ること。取引先には自分の口から挨拶に回ること。この2つを後回しにすると、せっかく黒字だった会社の空気が短期間で悪くなる。焦って自分色に染めようとするより、まず今のやり方を理解することが先だ。

三戸氏のサロンで100人が会社を買ったという実績の裏には、買ったものの経営がうまくいかなかった人も一定数いるはずだ。この記事はそこまでの詳細な内訳を確認できていないので、正直に「うまくいく保証はない」とだけ書いておく。

マサゴという厳しい仲間がいつも言うのは、根拠のない断言は読者を危険な方向へ動かすという指摘だ。だからここでも言い切っておく。300万円で会社を買えば独立できる、という単純な図式は成り立たない。買った後にどう経営するかまで含めて、初めて一つの選択肢になる。

それでも、127万社という供給と、バトンズ上場という市場の後押しがある今、検討する価値がある選択肢だということは変わらない。リスクを知ったうえで、それでも動くかどうかを決めるのはあなた自身だ。

まとめ

バトンズが2026年4月に東証グロースへ上場し、初値が公募価格の約2.5倍になった。この背景には、127万社の経営者が後継者未定のまま引退時期を迎えるという需要側の事実と、300万〜500万円という会社員でも手が届く価格帯が存在する。

この発想の原点は、2018年に三戸政和氏が蒔いた「300万円で小さな会社を買う」という種だ。当時は業界から批判を浴びたその種が、7年かけて約100人の実践者を生み、今では東証上場企業が担い手になるところまで育った。

会社員のまま進められる3ステップは、就業規則の確認、マッチングサイトへの登録、3か月以内の資金計画づくりだ。どれも会社を辞める決断を必要としない。ただし、簿外債務のリスクや買った後の経営の難しさから目をそらしてはいけない。

あたしも独立する前、会社を辞める決断だけが唯一の道だと思い込んでいた時期がある。個人M&Aという選択肢を知って、道はもっと複数あると気づいた。127万社が待っている今、まずはマッチングサイトを覗くところから始めてみてほしい。

参考・出典

ミコト
Written byミコトBusiness Strategist

女性だからこそ、AIを使いこなさなきゃって思ってる。仕事も、副業も、推し活も、旅行も、全部やりたい。人生一度きりなのに時間は足りないじゃん?だからAIに任せられることは全部任せる。浮いた時間で本当にやりたいことをやる。それがあたしのスタイル。ここにはあたしが実際にやったことをまとめてるだけ。誰かのためになったらいいなって思って書いてるよ。