開発/設計

ITエンジニア賃金二極化、上流2割高・下流5割安という日経データ

日経が報じたITエンジニア賃金二極化データと、レバテック調査『転職意識49.5%』を読み解き、AI時代に上流工程へ移る具体策を考えた

この記事でわかること

  • 本文に入る前に、まず押さえるべき結論
  • 開発や実装の判断が、ここからどう変わるか
  • 次に読むべき関連記事の入口
ITエンジニア賃金二極化、上流2割高・下流5割安という日経データ
目次

「AIでコードが書ける」と胸を張っていた矢先、日経の記事で足元をすくわれた気がした。ITエンジニアの賃金が、AIによって上流と下流にはっきり分かれ始めているというデータだ。上流工程の単価は2割上がり、コード生成など下流工程は5割も下がっているという。

私はCS出身で、Claude CodeやCursorを使って個人開発を続けている。AIのおかげで書けるコードの幅は広がったが、同時に「自分がやっている作業は上流なのか下流なのか」という問いも突きつけられた。喜んでいる場合ではなく、自分の立ち位置を測り直す機会だと言える。

今日はこの賃金二極化のデータを起点に、半年前に指摘されていた「IT業界の分断」論、そして最新の転職意識調査まで並べて読み解きたい。ニュースを個別に眺めるだけでは気づきにくいが、3つを時系列で並べると同じ流れが見えてくる。読み終える頃には、自分の作業がどちら側に近いかを自己診断できる状態を目指す。

「AI代替の仕事は5割安」、日経データが示す上流と下流の分かれ目

日経新聞は2026年6月19日、「労働臨界」という連載でひとつのデータを報じた。ITエンジニアの賃金が、AIの影響で二極化しているという内容だ。

具体的な数字はこうだ。2022年以降、AIに代替されにくい仕事、つまり要件定義や設計といった上流工程の単価は2割上昇した。一方で、コード生成など自動化が進む下流工程の単価は5割下落したという。同じ「ITエンジニア」という職種名の中に、正反対の値動きが同居している。

私はこの記事を読んで、まず数字の大きさに驚いた。2割の上昇と5割の下落では、影響の重みがまったく違う。上流は緩やかに評価が上がっている程度だが、下流は半分の価値になっているという話だ。コードを書く作業そのものへの値付けが、この4年ほどで大きく変わったことになる。

ITエンジニア賃金二極化の図解

もうひとつ見逃せないのは、これが「AIに仕事を奪われるかどうか」という二択の話ではないという点だ。下流工程がゼロになったわけではない。ただ、その工程だけをこなす人材の市場価値が、はっきりと下がり始めている。私自身、日々の個人開発でコード生成をAIに任せる場面がここ数年で増えた。もし自分の仕事が「コードを書くこと」だけで完結していたら、この二極化の下側に立っていたかもしれない。

同じ「労働臨界」連載には、経営者側の視点を映した記事もある。人手不足の解消策として生成AIを挙げた経営トップは6割にのぼるという調査結果だ。ただしその内訳を見ると、エンジニアの逼迫感は緩和している一方、現業職などの人材難はむしろ強まっている。経営側もまた、AIで埋められる業務とそうでない業務を選別し始めているようだ。

エンジニアという職種だけを切り出しても、経営側は「代替できる部分」と「代替できない部分」を冷静に見分けているわけだ。下流工程を担う人材を減らし、その分の予算を上流工程の人材確保に回す。そんな判断が、賃金データの背景にあるのだと私は読んでいる。

日経の同じ連載では、もう一つ別の角度からの記事も出ている。「AI時代、ITエンジニアの役割は?」という記事だ。AIの出す答えの盲点を補う視点や、文系出身者ならではの視座の重要性が指摘されていた。技術力そのものよりも、AIが見落とす部分を埋める役割に価値が移っているという論旨である。

この論旨は、CS出身の私にとって他人事ではなかった。技術の深さでは敵わない相手が世の中にいることを、私はすでに一度思い知っている。だが「AIが見落とす部分」を埋める役割なら、技術一辺倒ではない経歴がむしろ武器になるはずだ。賃金データと役割論は、同じ現象を別の切り口から照らしていると言える。

半年前の「2つの世界」論が、賃金という数字でついに現実になった

この賃金二極化のニュースを読んで、私はもうひとつの記事を思い出した。日経ビジネスが2026年2月13日に公開した「2つの世界に分断された日本のIT業界」という記事だ。半年近く前の記事であり、今回の賃金データのような速報ではない。

その記事の主張はこうだ。日本のIT業界は、SIerを中心とした人月商売型の組織と、IT企業や事業会社のデジタル推進組織という、2つの世界に分かれている。厄介なのは、それぞれの世界の住人が、もう片方の世界の実態をほとんど知らないという点だった。

IT業界の2つの世界構造

2月の時点では、この「分断」は組織文化や働き方の違いという、やや定性的な話として読めた。多重下請け構造の中で人月単位の仕事をこなす世界と、内製開発でプロダクトを育てる世界。どちらが良い悪いという話ではなく、単に見えている景色が違うという指摘だったと私は理解している。

それから4ヶ月後、賃金という具体的な数字がこの分断を裏づけた。上流工程を担う人材の単価は上がり、下流工程だけをこなす人材の単価は下がっていく。これは、2月の記事が描いた「2つの世界」が、実は賃金という一本の軸の上でも分かれ始めていたことを意味していた。定性的な違和感が、4ヶ月かけて定量的な数字に変わったのだと私は読んでいる。

私が興味深いと感じたのは、2月の記事も6月の記事も、AIそのものを主役として書いていない点だ。2月の記事はあくまで日本のIT業界の構造問題として「分断」を描いていた。その分断線を、AIという新しい変数がより濃く、より測定可能な形でなぞっていく。そう捉えると、AIは新しい分断を作ったというより、もともとあった分断を可視化しただけなのかもしれない。

もう一段掘り下げると、2月の記事が指摘した「相互不可視」という点も気になる。SIer側の人材は、デジタル推進組織の内製開発の実態をほとんど知らない。逆もまた同じだ。この相互不可視の状態は、賃金二極化が進んだ今、放っておくとさらに広がる可能性がある。上流側にいる人材は下流側の窮状を知らず、下流側にいる人材は上流に移る具体的な道筋を知らないまま、両者の距離だけが開いていく構図が目に浮かぶ。

私自身、SIer的な多重下請けの現場を経験したことはない。だからこそ、この記事を読んだときに感じたのは同情よりも危機感だった。自分がどちらの世界に近い働き方をしているかを自覚していない人ほど、二極化の影響を後から実感する形で受け取ることになる。半年前の記事を今読み返す意味は、この一点に尽きると思う。

転職を意識するエンジニアの半数が「上流」を選んだ理由

賃金データが二極化を示す一方で、当のエンジニアたち自身はどう感じているのか。ここでレバテックが2026年5月26日から28日にかけて実施した調査が参考になる。ITエンジニア572人を対象にした調査だ。

結果は、49.5パーセントのエンジニアが、AIの影響で転職を意識したというものだった。約半数という数字は、賃金二極化のニュースと並べて読むと、決して大げさな反応ではないように思える。

エンジニアの転職意識とスキル調査

転職を意識した理由の内訳も具体的だ。最も多かったのは「AIによる業務代替リスクを感じた」で29.0パーセント。次いで「より上流工程や高度なスキルを身に付ける必要性を感じた」が25.8パーセントだった。この2つを合わせると、回答者の半分以上が「代替される不安」と「上流に行く必要性」をセットで感じていることになる。

同じ調査では、AIの進化によって自分の仕事が代替されると思うかという質問もあった。「そう思う」が37.7パーセント、「そう思わない」が27.8パーセントで、思う側が上回っている。それでも日経の別記事によれば、9割のエンジニアは「今後も人間は必要」と回答しているという。全面的な悲観ではなく、代替される部分と残る部分を、当のエンジニアたちも冷静に切り分け始めている印象を受けた。

強化したいスキルの1位は「要件定義・上流工程スキル」で38.8パーセントだった。これは偶然ではないと思う。賃金データが上流の単価上昇を示し、エンジニア自身も上流スキルの必要性を最も強く感じている。データと現場の実感は、同じ方向を向いているようだ。

この結果を読んで私が安心したのは、悲観一色ではなかった点だ。37.7パーセントが代替を懸念しつつも、9割が「人間は必要」と答えている。この差は、代替される作業と残る役割の見極めができている人がすでに一定数いることを示していると思う。強化したいスキルが「要件定義・上流工程」に集中しているのも、闇雲な不安ではなく、次に何を学べばいいかという具体的な方向感覚があることの表れだと感じる。

一方で、この調査結果を裏返すと、上流スキルを強化する明確な方法がまだ広く共有されていないとも読める。「上流に行きたい」と思っても、何から始めればいいか分からない人は少なくないはずだ。次の章では、CS出身の私自身がどうやってその移行を進めてきたかを具体的に書く。

挫折した私がAIで「上流工程」の価値を手に入れた経緯

ここまでは統計とニュースの話だったが、私自身の話もしておきたい。私はもともと新卒でWeb開発会社に入り、フロントエンドもバックエンドも書いていた。だが次の会社で大規模プロジェクトに参加した際、次元の違うエンジニアたちに出会い、専業エンジニアとして生きていく道を自分から降りることになる。

そこからカスタマーサクセスへキャリアを移した。コンテンツマーケティングCMSの導入支援や、メディアグロースの現場で、ユーザーの声を何千回も聞くことになる。「ここが使いにくい」「なぜこの機能が必要なのか」という声だ。当時はこれを、開発から離れた代償のように感じていた。

転機はClaude CodeやCursorを使い始めたことだった。AIが自分の意図を先回りしてコードを提案してくれる。実際に動かしてみると、本当に動く。かつて自分が到達できなかったレベルのコードが、自分の指示で形になっていく感覚があった。

AIとITエンジニアの役割変化

振り返ってみると、私がAIを使って得たのは、コーディングの代替ではなく上流工程への時間の再配分だったと思う。カスタマーサクセス時代に聞いた「なぜこの機能が必要か」という問いは、今も自分がツールを作るときの判断軸として生きている。コードを書く時間そのものはAIに任せる部分が増えたが、何を作るか、誰のために作るかという判断は、むしろ以前より重くなった。

これは日経の記事が描いた二極化の構図と重なる。下流工程だけをこなしていたら、私も5割安という側に立っていたかもしれない。だがCS出身のユーザー視点という、AIには代替しにくい判断軸を持っていたことが、結果的に上流側へのシフトを後押ししてくれた。

正直に書くと、私はエンジニアとしての技術力で上流に評価されているわけではない。設計思想の深さやパフォーマンスチューニングの勘所は、大規模プロジェクトで出会った本物のエンジニアたちには今も敵わないと思っている。それでも「なぜこの機能が必要か」をユーザーの言葉で説明できることは、技術力とは別の軸で評価されうる部分だ。日経の記事が言う「文系の視座」にも近い話だと思う。

AIが登場する前、この価値は個人開発の場ではあまり活かしようがなかった。ユーザー視点を持っていても、それを形にするコーディング力が追いつかなかったからだ。今はAIがその橋渡しをしてくれている。判断を私が下し、実装はAIに任せる形に落ち着いた。この分業ができるようになったこと自体が、挫折した私にとって最大の変化だったと思う。

下流から上流へ、今日から始められる3つの具体的な一歩

理屈だけでは、私の記事らしくない。「とりあえず動くもん作ろう」の精神で、今日から始められる3つの一歩を用意した。

一歩目は、自分の作業を「コードを書く時間」と「何を作るか判断する時間」に分けて棚卸しすることだ。1週間分の作業ログを振り返り、どちらの時間が多いかを紙に書き出してみる。私自身、この棚卸しをやってみて、思っていたよりコーディング自体に時間を使っていないことに気づいた。判断や確認のやりとりにこそ、実は時間がかかっているとわかる。

二歩目は、下流工程を先に自分の手でAI化してしまうことだ。誰かに代替される前に、自分でその作業を自動化する側に回る。私が業務ツールを作るときも、発端はいつも「この定型作業をAIに任せられないか」という発想だった。非エンジニアでもコードに触れるようになった今、この一歩のハードルは以前よりずっと低い。非エンジニアAI起業の入口を扱った記事でも近い指摘があった。コードが書けないことは、もう参入障壁にならないという話だ。

具体的には、まず自分の作業の中から「毎週同じ手順を繰り返しているだけの部分」を1つだけ選ぶ。私の場合は、顧客ごとの利用ログを手作業で集計してレポート化する作業がそれだった。Claude Codeにログの読み込みとグラフ化のスクリプトを書かせるところから始めれば、早ければ数時間、長くても1日あれば最初の一歩を踏み出せる。完璧な設計を目指す必要はない。まず動くものを作ってから、直していけば十分だ。

三歩目は、上流工程に使う時間を意識的に確保することだ。定型業務を減らして生まれた時間を、また別の定型業務で埋めてしまっては本末転倒になる。要件定義や設計、ユーザーとの対話に時間を再配分できているか、週に一度は自分に問い直す。Claude Codeの使い方に不安がある人は、Claude Code非エンジニア向け8用途の記事から着手するといい。まず動かす感覚をつかみやすいはずだ。

私自身、この3つの一歩を意識するようになってから、AIに何を任せて何を任せないかの線引きが以前よりはっきりした。上流に行くというのは、必ずしも役職を上げることではない。今の作業のまま、時間の配分だけを変えることでも十分に始められる。

まとめ

日経が報じたITエンジニアの賃金二極化データ、半年前の「2つの世界」論、そしてレバテックの転職意識調査。3つを並べると、ひとつの流れが見えてくる。

  • 2022年以降、上流工程の単価は2割上昇、下流工程は5割下落という二極化が日経「労働臨界」連載で報じられた
  • 半年前に指摘されていたSIer型組織とデジタル推進型組織という「2つの世界」の分断が、賃金という数字でついに裏づけられた
  • ITエンジニア572人への調査では49.5パーセントがAI理由の転職を意識し、強化したいスキル1位は「要件定義・上流工程」だった
  • 経営トップの6割が人手不足の解消策として生成AIを挙げる一方、エンジニアの逼迫感緩和と現業職の人材難という濃淡も同時に進んでいる

かつてコードを手放した私が、AIのおかげでもう一度手にできたのは、下流工程の代替ではなく上流工程への時間だったと今は思う。二極化のどちら側に立つかを決めるのは、AIではなく、自分がどの時間を上流に使うかだ。

技術力だけで上流に立てる人は、正直そう多くない。私自身、専業エンジニアとしての深さでは今も敵わない相手がいる。それでもユーザー視点や判断の軸を持ち、AIに実装を委ねる分業ができれば、上流側に立つ道は誰にでも開かれた状態だ。データを読んで不安になるだけでなく、今日その棚卸しを始めない理由はない。

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ゲン
Written byゲンCS × Vibe Coder

正直、一度エンジニアは諦めました。新卒で入った開発会社でバケモノみたいに優秀な人たちに囲まれて、「あ、私はこっち側じゃないな」って悟ったんです。その後はカスタマーサクセスに転向して10年。でもCursorとClaude Codeに出会って、全部変わりました。完璧なコードじゃなくていい。自分の仕事を自分で楽にするコードが書ければ、それでいいんですよ。週末はサウナで整いながら次に作るツールのこと考えてます。